子供の頃に夢見た、大きな犬と一緒に歩く散歩道。リモートワークが普及し、自宅で過ごす時間が増えた今、その夢を現実にしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、「都内の賃貸で一人暮らしの自分に、本当に大型犬を幸せにできるのか?」という不安が、一歩を踏み出す足かせになっているかもしれませんね。

結論から申し上げます。 一人暮らしで大型犬と暮らすことは、決して無謀な夢ではありません。ただし、実現には「0.28%の物件探し」と「年間約19万円の固定費」という現実を乗り越える具体的な戦略が不可欠です。
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの藤井聡です。私自身、ラブラドール・レトリバーと15年間寄り添って暮らしてきた経験があります。この記事では、プロの視点から信頼できる公的データを用い、あなたの夢を現実に変えるためのステップを丁寧に解説しましょう。読み終える頃には、漠然とした悩みは消え、今何をすべきかが明確になっているはずですよ。
はじめに:あなたの「大型犬と暮らしたい」は、無謀な夢じゃない
まず、最初にお伝えしたいことがあります。大型犬との暮らしを真剣に考え、その責任の重さから不安を感じていること自体、あなたが非常に誠実な方である証拠です。私のもとへ相談に来られる方の多くも、「私でも飼えますか?」と問いかけますが、その不安の根底にあるのは「この子を最後まで守り切りたい」という強い愛情に他なりません。その気持ちこそが、素晴らしい飼い主になるための最も重要な資質なのです。

私の愛犬が教えてくれたように、大型犬との生活は、人生を何倍にも豊かにし、言葉では言い表せない充足感を与えてくれます。だからこそ、その夢を単なる憧れで終わらせないために、まずは現実の壁を正しく把握し、一緒に具体的な準備を始めていきましょう。
【不都合な真実】大型犬と一人暮らしを阻む「住まい」と「お金」の壁
夢を形にするための第一歩は、乗り越えるべき壁の高さを正確に知ることです。少し厳しい数字もお伝えしますが、これを知ることで逆に「どう動けばいいか」の指針が見えてきます。

1. 住まいの壁:都内1LDKで大型犬可の物件は、1000件に3件もない
「ペット可」と記載されている物件は年々増えていますが、その大半は小型犬を想定したものです。不動産会社の調査によれば、東京23区内の1DK・1LDK賃貸物件のうち、 「大型犬相談可」の物件は全体のわずか0.28%しか存在しません。
これは、あなたがポータルサイトで1000件の物件情報をチェックして、ようやく2〜3件見つかるかどうかという確率です。一人暮らしに適した間取りで、かつ大型犬を受け入れてくれる大家さんを見つけることが、最初の、そして最大のハードルとなるでしょう。
2. お金の壁:年間飼育費用の平均は約19万円
次に考えなければならないのが継続的なコスト面ですね。一般社団法人ペットフード協会の最新調査(出典:2023年 全国犬猫飼育実態調査)によると、中・大型犬の年間飼育費用は平均で190,117円となっています。月額に直すと約1.6万円ですが、これはあくまで健康な状態での平均値であることを忘れてはいけません。

【STEP1】月々いくら?大型犬との生活費完全シミュレーション
年間約19万円という数字を、もっとあなたの日常に寄せて分解してみましょう。特に大型犬の場合、体重に比例してフード代やフィラリア予防薬などの薬代が高くなる傾向にあります。
予測不能な「医療費リスク」をどう管理するか
大型犬の飼育において、最も家計を揺るがすのが突発的な医療費のリスクです。例えば、大型犬に多い「胃捻転」の手術では、緊急入院を含めて30〜60万円の費用がかかることも珍しくありません。一人暮らしで貯金が十分でない時期にこの出費は大きな痛手となるでしょう。
✍️ 専門家のアドバイス
愛犬との穏やかな毎日を金銭的な理由で諦めないために、 ペット保険は「万一の備え」ではなく「毎月の必須固定費」として家計に組み込んでください。 「お金が払えないから治療を諦める」という決断は、飼い主にとって耐え難い苦しみとなります。保険は愛犬の命を守ると同時に、あなた自身の心を守るお守りになると私は確信しています。
あわせて、シニア期に医療費が増えやすい背景や、日々の習慣で健康寿命を伸ばす考え方は、大型犬の健康寿命を延ばす4つの習慣(食事・運動・環境・健康管理)で具体的に解説しています。
ライフスタイル別・3つの月額予算プラン
ITエンジニアとして働く一人暮らしの方のケースを想定し、3つのプランを作成しました。ご自身の現在の家計状況と照らし合わせてみてください。

| 費用項目 | 竹プラン(標準) | 松プラン(充実) | 梅プラン(節約) |
|---|---|---|---|
| フード・おやつ代 | ¥10,000 | ¥15,000 | ¥7,000 |
| 保険料・予防医療 | ¥7,000 | ¥10,000 | ¥5,000 |
| 消耗品(シーツ等) | ¥3,000 | ¥5,000 | ¥2,000 |
| トリミング・雑費 | ¥5,000 | ¥10,000 | ¥2,000 |
| 月額合計 | ¥25,000 | ¥40,000 | ¥16,000 |
【STEP2】0.28%の壁を越える。大型犬可賃貸の探し方と交渉術
予算の目処が立ったら、いよいよ住居探しですね。前述した0.28%という絶望的な数字を突破するためには、ポータルサイトを眺めるだけではない、攻めの姿勢が必要になります。
「ペット専門」の不動産会社に相談する
一般的な賃貸サイトに載らない「非公開物件」を狙うのが賢い選択です。大型犬を飼っている大家さんは、過去にトラブルがなかった優良な飼い主を求めています。ペット専門の仲介会社であれば、あなたの現在の勤務形態(リモートワークなど)を大家さんに伝え、安心感を与えた上で交渉を進めてくれるでしょう。
リモートワークを武器にした「大家さん直接交渉」
物件情報に「大型犬不可」とあっても、交渉の余地がある場合があります。特に個人オーナーの物件が狙い目です。その際、 「リモートワークで日中も常に在宅している」という事実は、大家さんにとって最大の安心材料になります。
犬が寂しさから吠えたり、退屈して部屋を壊したりするリスクが低いことを具体的に伝えましょう。また、「敷金を1ヶ月分多めに積み増す」「しつけ教室の修了証を提出する」といった具体的な誠意の示し方も有効かなと思います。

【STEP3】一人暮らしの不安を解消する「セーフティネット」の構築
お金と住まいの目処が立っても、一人暮らしならではの「もしも自分が病気になったら?」という不安は消えないものです。これには、物理的な対策と周囲のサポートの両面で備えておきましょう。
外部サービスをリストアップしておく
仕事の繁忙期や急な外出に備え、近所の「大型犬対応」のペットホテルやシッターを事前に見つけておくことが重要です。一度体験利用をしておくと、犬も環境に慣れるのでいざという時もスムーズでしょう。
緊急連絡先を愛犬のそばに
万が一、あなたが外出先で事故に遭ったり急病で倒れたりした場合、自宅に残された犬を救うための手段を確保してください。信頼できる友人や家族に合鍵を渡し、財布の中には「自宅に犬がいます。緊急時はこちらへ連絡してください」というカードを入れておくことを強くおすすめします。これは、一人暮らしの飼い主が守るべき最低限の責任だと言えるでしょう。
具体的な準備については、こちらの 大型犬の迎え方と準備のポイント や、 大型犬の生涯費用シミュレーション も非常に参考になりますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ:「飼えるか?」から「飼うために今何をするか?」へ

ここまでお読みいただいたあなたは、もはや「大型犬と暮らせるだろうか」と漠然と悩む段階を卒業しました。乗り越えるべき壁の高さ(住居0.28%、年間費用19万円)を知り、それに対する具体的な対策が見えてきたはずです。
- 家計を見直し、 月額2.5万円程度の飼育予算 を確保する。
- リモートワークという強みを活かし、ペット専門不動産を通じて大家さんと交渉する。
- 自分に万が一があった際のバックアップ体制(友人・ホテル)を構築する。
大型犬との暮らしは、確かに責任も重く、相応のお金もかかります。しかし、そのすべてを上回るほどの幸せがあなたを待っているのも事実です。夢を現実に変えるための最初の一歩として、まずは今夜、あなたの収入に合わせた年間予算計画を立てることから始めてみませんか?
あなたの素晴らしい愛犬ライフが始まる日を、心から応援しています。

この記事の監修者
長谷川 恵(はせがわ めぐみ)
獣医師 / 1級愛玩動物飼養管理士
都内動物病院院長。一人暮らしで大型犬を育てる飼い主様を、医療と生活環境の両面からサポートしています。大型犬は体が大きい分、健康管理や住環境の整備が一生の幸福度を左右します。「一人だからと諦める必要はありませんが、プロの知恵を賢く借りてください」というスタンスで、医学的根拠に基づいた「飼い主も愛犬も無理をしない暮らし」の提案を行っています。
[参考文献リスト]
- ・一般社団法人ペットフード協会. 「2023年(令和5年)全国犬猫飼育実態調査」
- ・株式会社バレッグス. 「一人暮らしでペットを飼う物件調査資料(2023年度版)」


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