愛犬が寝ながらキャンキャン鳴くのは大丈夫?獣医師が教える「夢か発作か」30秒診断チェックリスト

獣医師 長谷川 恵

この記事を書いた専門家
長谷川 恵(はせがわ めぐみ)

獣医師 / 1級愛玩動物飼養管理士

都内動物病院院長。日々の診療で「愛犬が寝ている時に苦しそうに鳴く」「痙攣しているかもしれない」といった夜間の不安に関する相談を数多く受けている。「寝言はリラックスしている証拠ですが、稀にてんかん発作などの病気が隠れていることもあります。飼い主さんが”見守っていい時”と”すぐ受診すべき時”を正しく判断できるよう、分かりやすいアドバイスを心がけています」


1ヶ月前に迎えたばかりの愛犬が、夜中に突然苦しそうに鳴き出したら、心臓が止まるような思いがしますよね。その小さな体がどこか痛いのではないか、うちに来てストレスを感じさせているのではないかと、頭の中が真っ白になるかもしれません。

まず結論から言うと、そのほとんどは心配のない「寝言」です。しかし、ごく稀に危険な病気のサインが隠れていることも事実です。

この記事では、獣医師である私が、万が一の事態を見逃さないための「30秒でできる診断チェックリスト」をご提供します。

読み終える頃には、あなたの「どうしよう…」という不安は、「私には、万が一の時も見抜ける」という冷静な自信に変わっているはずです。

まずは安心してください。犬が寝ながら鳴く「ほとんどの理由」

夜中にご相談の電話をいただく中で、「うちに来たストレスが原因ですか?」と心配される方がとても多いのですが、多くの場合、その鳴き声は愛犬が楽しい夢を見ている幸せなサインなんですよ。

犬も人間と同じように、睡眠中に脳は活発に動いているけれど体は休んでいる「レム睡眠」という状態があります。このレム睡眠中に、犬は夢を見ていると考えられています。

夢の内容に反応して、まるで本当に走っているかのように足がピクピク動いたり、ワンワンと寝言を言ったりすることがあるのです。これは脳からの指令が体に伝わっているだけで、ごく自然な生理現象なので、まずは心配しすぎないでくださいね。

犬が寝ながら足を動かしたり鳴いたりするのは、レム睡眠による夢が原因。脳は起きているが体は休んでいるリラックス状態を示す獣医師監修の解説スライド 。

【緊急時用】これが危険のサイン。「夢か発作か」30秒診断チェックリスト

ほとんどが安心な寝言である一方、飼い主さんが最も注意すべきなのは、症状が似ている「てんかん発作(痙攣)」です。寝言とてんかん発作は、一見すると見分けがつきにくいですが、両者には明確な違いがあります。

パニックにならずに済むよう、今すぐ使えるチェックリストを用意しました。愛犬の様子を観察しながら、冷静に確認してみてください。

安全な寝言と危険なてんかん発作の違いを比較。体の硬直や呼びかけへの反応など、30秒で判断するための重要チェック項目をまとめた図解 。

📊 【30秒で確認】獣医師が使う「夢」と「発作」の見分け方

チェック項目 ✅ 大丈夫な夢(寝言)の場合 ⚠️ 危険な発作の疑いがある場合
体の状態 全体的にリラックスしている。足がピクピク動く程度。 体がガチガチに硬直し、突っ張っている。激しく規則的な動き。
呼びかけへの反応 名前を呼ぶと、うっすら目を開けたり、動きが止まったりする。 呼びかけに全く反応しない。意識がないように見える。
目つき 閉じているか、半開き。 開いているが、焦点が合っていない。虚空を見つめている。
呼吸 穏やか。時々、少し速くなる程度。 呼吸が非常に荒い、または一時的に止まっているように見える。
持続時間 数秒〜数十秒で収まることが多い。 1分以上続くことが多い(それより短い場合もある)。
その後の様子 何事もなかったかのように、再び静かに眠り続ける。 発作後、混乱してウロウロしたり、一時的に目が見えなくなったりする。

このリストの中で、特に重要なのが「体の硬直」「呼びかけへの反応」です。体が硬直し、呼びかけても全く反応がない場合は、てんかん発作を強く示唆する危険なサインと言えます。

また、「夜中に鳴き続ける」「混乱して徘徊する」といった症状は、発作後だけでなく、シニア期の認知機能低下など別の原因で起きているケースもあります。見極めや対策の考え方は、老犬の行動変化は病気のサイン?認知症との違いや対策を徹底解説も参考にしてください。

ケース別・飼い主さんが「今すべきこと」「してはいけないこと」

チェックリストで確認した後、どのように行動すればよいかを具体的にお伝えします。

迷ったらスマホで動画を撮影する重要性と手順。口の中に手を入れるのは絶対NGなどの禁止事項と、夢の場合・発作の場合それぞれの適切な対応フロー 。

✅ 大丈夫な夢(寝言)の場合

⭕️ 今すべきこと

  • そっと見守る: 愛犬の楽しい夢の時間を邪魔しないであげましょう。微笑ましい姿を動画に撮っておくのも良い記念になります。

❌ してはいけないこと

  • 無理に起こす: 心配のあまり、体を強く揺すって起こしてしまう方がいますが、これはNGです。夢の途中で突然起こされると、犬は混乱してしまい、驚いて飼い主さんを噛んでしまう可能性すらあります。

⚠️ 危険な発作が疑われる場合

⭕️ 今すべきこと

  1. 安全を確保する: まずは落ち着いて、愛犬の周りにある家具や硬いものを遠ざけ、頭をぶつけないように守ってあげてください。
  2. 時間を計測する: 発作が何分続いたかは、診断のうえで非常に重要な情報です。スマホのストップウォッチなどで計測しましょう。
  3. スマホで動画を撮影する: 発作の様子を動画で記録してください。言葉で説明するよりも、映像を見せる方が獣医師にはるかに多くの情報が伝わります。これは、私が夜間救急の現場で常に飼い主さんにお願いしていたことです。

❌ してはいけないこと

  • 口の中に手や物を入れる: 舌を噛む心配はほとんどありません。無理に口を開けようとすると、大怪我につながる危険があります。
  • 体を強く押さえつける: 発作は押さえつけて止まるものではありません。怪我の原因になるので、見守るに徹してください。

なお、発作に加えて「ぐったりしている」「呼吸が荒い」「体に触れると激しく痛がる」など他の危険サインがある場合は、緊急性がさらに高い可能性があります。判断に迷う時は、動物病院へ行くべき危険な症状チェックリストも合わせて確認してください。

発作が収まったら、かかりつけの動物病院、もしくは夜間救急動物病院に電話して、指示を仰ぎましょう。

よくあるご質問(FAQ)

Q1: 寝ている時に起こしても大丈夫ですか?

A1: 危険な発作の兆候がない限り、無理に起こす必要はありません。前述の通り、犬を混乱させてしまう可能性があるため、そっと見守ってあげるのが一番です。

Q2: いびきや歯ぎしりも心配です。

A2: フレンチ・ブルドッグやパグなどの短頭種は、構造的にいびきをかきやすいです。歯ぎしりは、ストレスや口の中の違和感が原因のこともあります。もし急に始まったり、音が大きくなったりした場合は、一度獣医師に相談してみると安心です。

Q3: ストレスが原因で悪夢を見ることはありますか?

A3: はっきりとした因果関係は証明されていませんが、人間と同じように、環境の変化や日中の怖い経験などが夢に影響を与える可能性は考えられます。愛犬が安心して眠れるように、静かで快適な寝床を用意してあげることも大切です。


まとめ:あなたの冷静な観察が、愛犬を守る一番の力になります

愛犬の寝言は、ほとんどが正常な夢の証です。しかし、万が一に備え、「体の硬直」「呼びかけへの無反応」という2つの危険なサインだけは、ぜひ覚えておいてください。

深夜に不安になって検索したあなたの行動は、愛情深い、素晴らしい飼い主である証拠です。自信を持ってください。

この記事の診断チェックリストのページをブックマークし、万が一の時のお守りにしてください。そして、少しでも迷ったら、ためらわずに獣医師に相談することが重要です。夜間や休日に対応しているお近くの救急動物病院を、この機会に調べておくと、いざという時に慌てずに済みますよ。

[参考文献リスト]

  • “Seizures in Dogs”, VCA Animal Hospitals
  • “Why Do Dogs Twitch in Their Sleep?”, American Kennel Club (AKC)
  • “Canine Epilepsy”, Cornell University College of Veterinary Medicine

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