ペットエアコンつけっぱなしで電気代は？獣医師が教える設定と節約術

初めてわんちゃんを迎えた夏、日中のお留守番は心配ですよね。「暑すぎないかな？」でも「電気代は大丈夫かな？」…そのお気持ち、とてもよく分かります。

ご安心ください。愛犬の健康を守ることと、電気代を賢く節約することは、ポイントさえ押さえれば両立できます。この記事は、獣医師の知識と電気のプロの節約術を凝縮した、あなただけの「安心エアコン処方箋」です。

読み終える頃には、具体的な設定温度と電気代の目安が分かり、今日からすぐ実践できる節約術を身につけて、安心して夏を迎えられるようになります。
[著者情報]

この記事を書いた専門家
長谷川恵（はせがわめぐみ）

獣医師 / 1級愛玩動物飼養管理士

都内動物病院院長。飼い主向けの「ペットの熱中症対策セミナー」を毎年開催。「電気代を気にするのは、愛情がないからではありません。愛犬との暮らしを長く続けるために、現実的な問題を考えるのはとても大切なことです。一緒に、賢く安心できる方法を見つけましょう」というスタンスで、飼い主の悩みに寄り添う。

監修

この記事の監修者

佐野健人（さのけんと）

獣医師 / 都内動物病院院長

北里大学獣医学部卒業。都内の救急動物医療センターでの勤務を経て、現在は地域密着型の動物病院にて院長を務める。専門は循環器科と予防医療。「飼い主様の話をよく聞くこと」を診療方針とし、セカンドオピニオン対応も積極的に行っている。

※本記事の内容は、公開時点での一般的な獣医学的知見に基づいています。ペットの体調や症状には個体差があるため、異変を感じた場合は速やかにかかりつけの動物病院を受診してください。

この記事の監修者

なぜ危険？「ちょっとくらい大丈夫」が愛犬の命を奪う熱中症の怖さ
これが最適解！愛犬のための「安心エアコン設定」と電気代のリアル
1. 獣医師が推奨する安全ラインは「室温26〜28℃、湿度50%前後」
2. 気になる電気代：「設定温度」と「電気代」はトレードオフの関係
今日からできる！電気代を無理なく抑える3つの簡単テクニック
よくある質問と注意点
まとめ：正しい知識で、愛犬との快適な夏を

なぜ危険？「ちょっとくらい大丈夫」が愛犬の命を奪う熱中症の怖さ

毎年、夏の初めに「まさかうちの子が」という飼い主さんが、ぐったりしたわんちゃんを抱えて病院に駆け込んできます。この問題の根底にあるのは、犬と人間の体の違いです。

私たち人間は汗をかくことで体温を調節できますが、犬は汗腺が足の裏などにしかなく、主に舌を出してハッハッと呼吸する「パンティング」でしか熱を逃がせません。そのため、不適切な室温や湿度の環境下では、犬の体温は急激に上昇し、熱中症を引き起こすのです。熱中症は、重症化すると多臓器不全などを起こし、命に関わる非常に怖い病気です。

特に、子犬やシニア犬、そして鼻の短いパグやフレンチ・ブルドッグなどの短頭種は、特に熱中症のリスクが高いとされています。

電気代への懸念からエアコンの使用をためらう気持ちは理解できますが、その一瞬の判断が、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。夏のエアコンは贅沢品ではなく、愛犬の命を守るための必需品だと考えてください。

これが最適解！愛犬のための「安心エアコン設定」と電気代のリアル

では、具体的にどうすれば良いのでしょうか。ここでは、獣医師として推奨する「安全な設定」と、気になる「電気代の目安」を具体的にお伝えします。この2つを把握することが、漠然とした不安を解消する第一歩です。

獣医師が推奨する安全ラインは「室温26〜28℃、湿度50%前後」

私が多くの飼い主さんにお伝えしている、わんちゃんにとっての安全ラインは「室温26〜28℃、湿度は50%前後」です。

重要なのは、エアコンの「設定温度」ではなく、わんちゃんが実際に過ごす空間の「室温」をこの範囲に保つことです。床付近は冷たい空気が溜まりやすいため、床の近くに温湿度計を一つ置いて、実際の環境をチェックする習慣をつけましょう。

気になる電気代：「設定温度」と「電気代」はトレードオフの関係

当然ながら、エアコンの設定温度を下げれば安全性は高まりますが、その分、電気代は上がります。このトレードオフの関係を理解し、ご自身の愛犬と家計にとっての最適なバランス点を見つけることが大切です。

エアコンの電気代は、消費電力（kWh）に使用する電気料金単価を掛けることで計算されます。つまり、消費電力をいかに抑えるかが節約の鍵となります。

以下の図は、一般的な6畳用のエアコン（消費電力500Wと仮定）を24時間つけっぱなしにした場合の、設定温度ごとの電気代目安です。具体的な金額を知ることで、漠然とした不安は大きく軽減されるはずです。

今日からできる！電気代を無理なく抑える3つの簡単テクニック

「やっぱり電気代が…」と感じた方も、ご安心ください。専門家の視点から、効果が高く、誰でも今日から実践できる簡単な節約テクニックを3つだけ厳選しました。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: エアコンの電源をこまめにON/OFFするのは、かえって電気代が高くなる可能性があるのでやめましょう。

なぜなら、エアコンは起動時に最も多くの電力を消費するため、30分〜1時間程度の外出であれば、つけっぱなしの方が経済的です。この事実は多くの人が見落としがちで、良かれと思って実践した節約術が逆効果になっているケースをよく目にします。室温の急な変化はわんちゃんの体にも負担をかけるため、「つけっぱなし」がペットと家計の両方に優しい選択です。

1. 月に2回の「フィルター清掃」で性能を維持する

最も手軽で効果的なのが、エアコンのフィルター清掃です。フィルターの定期的な清掃は、エアコン本来の性能を維持し、無駄な消費電力を削減することに直結します。

環境省のデータによると、フィルターが目詰まりしている場合と比べて、月に1〜2回清掃するだけで冷房時で約4%の省エネになると言われています。2週間に一度を目安に、フィルターのホコリを掃除機で吸い取るか、水洗いする習慣をつけましょう。

2. 「サーキュレーター」との併用で効率を最大化する

冷たい空気は下に溜まる性質があります。そこで活躍するのがサーキュレーターです。エアコンとサーキュレーターを併用し、空気を循環させることで、エアコンの効率を飛躍的に高めることができます。

部屋全体の温度が均一になるため、エアコンが「部屋がまだ冷えていない」と勘違いして余計に稼働するのを防ぎ、結果的に消費電力を抑えることができます。

3. 「遮光カーテン」で窓からの熱をシャットアウト

室温が上がる最大の原因の一つが、窓から差し込む直射日光です。日中、家を留守にする際は、遮光カーテンやブラインド、すだれなどを活用して、窓からの熱の侵入を防ぎましょう。

室温の上昇を抑えることで、エアコンがフルパワーで稼働する時間を減らし、消費電力を大幅に削減できます。

よくある質問と注意点

最後に、飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。

Q1. 冷房と除湿（ドライ）、どちらが良いですか？
A1. 基本的には「冷房」をおすすめします。特に気温が高い日は、除湿だけでは室温を十分に下げられない可能性があります。ただし、湿度が高くジメジメする梅雨時などは、室温に応じて「除湿」と使い分けるのが良いでしょう。多くのエアコンに搭載されている「自動運転」モードは、気温と湿度を考慮して最適な運転をしてくれるため、最も効率的で間違いのない選択です。

Q2. 停電が心配です。何か対策はありますか？
A2. 夏の雷雨などで停電が心配な場合は、エアコンだけに頼らない暑さ対策も有効です。ペット用のクールマットや、凍らせたペットボトルをタオルで巻いたものをケージの近くに置いておくと、簡易的な避難場所になります。また、最近ではスマートフォンで遠隔操作できるエアコンや、室温を監視できるペットカメラも普及しているので、導入を検討するのも一つの手です。